じゅころぐAR

ARのブログ

2023年のARについて考えてみた

お久しぶりです!jyukoです!あっ、はい...生きてます!

ARを取り巻く環境であったり、モチベーションであったり、スプラとティアキンが忙しかったりで個人的な活動を休止していたのですが、ゆるゆると再開していこうと思います。

というのも、ここ1年でAR(MR)の環境がかなり変化してきた印象がありますよね!
リハビリを兼ねて、2023年現在のARについてjyukoの感想付きでまとめてみることにします。

デバイス環境の話

ここ1年で大きく動いたと思いますね。

スマートフォンARの失速感

いきなりですが、ちょっとマイナスの話から。活動休止して充電期間を作ったのも、この影響が大きいかもしれません。

スマートフォン自体の進化もここ数年で頭打ち気味になり、ARKit/ARCoreの機能もだんだんと目新しさがなくなってきました。そんな中でARを活用したキラーアプリが登場したかというと、パッと思いつくアプリは出てこないんじゃないでしょうか。

個人的に理由を分析すると、

  • スマートフォンをかざして見ることによるAR体験の質の低下が大きい
  • カメラを常時起動するためバッテリー消費が大きく、スマートフォン本来の通話・通信機能に支障が出てしまう

上記2点のデメリットが大きすぎるのだと思います。

特に利用時間を増やしたい日常系やゲーム系のアプリでは、バッテリーの問題が致命的なので、AR機能はおまけ要素になりがちだと思います。

メイン機能ではなくおまけ要素にしかならないのであれば、広告・プロモーション利用が向いていて、機能的にはシンプルでもアプリのインストールが不要なWebARの方が使い勝手はよさそうです。 ARKit/ARCoreよりも8th Wallなどがスマートフォンの特性に合っており、スマートフォンARでは一定の市民権を得たと言えるかもしれません。

Meta Quest Pro値下げ

2022年の10月に発表・発売されたMeta Quest Proフルカラーのパススルー機能が実装されるということで、従来のスタンドアロンのVRゴーグルという位置付けからARにも活用できるMRデバイスとして注目を集めました。

一方で、発表時は約23万円という価格から、普及に向けてはなかなか手が出しにくいデバイスでした。
ところが、発表から半年も経過していない今年3月に15万円台への大幅な値下げが行われています。現在は割引やポイントなどで15万円以下で購入が可能です。

この時点で、Apple Vision Proはまだ詳細が発表されていませんでしたが、MRが行えるデバイスが15万円で手に入るようになった事実は大きなトピックでした。

Apple Vision Pro発表

そして、待ちに待ったAppleのARデバイス"Apple Vision Pro"が発表されました。

www.apple.com

といっても、この時点で期待感はやや薄れていたことも事実で、体験の質が素晴らしい点を踏まえても、個人的にインパクトは大きくなかったのかなという気がします。

まず、発表の前にMeta Quest Proの値下げが行われていたこと。
AppleのARグラスは円安の影響もあり25万円くらいかな、10万円台だといいけど厳しいだろうな...という予想に対して、それを満たすMRデバイス(Quest Pro)の存在がありました。Vision Proが買えなかったとしても、体験の質を許容すればQuestでも代替できそうと現時点では考えています。

次に、価格ですね!ぶっちゃけ、$3,500は予想を超えてました。せいぜい$2,000~2,500くらいかなと。
どれだけ体験の質がよくても、50万円するデバイスが広く普及するのは難しいように思います。開発者としては、Apple Visionが今後普及する期待感があれば先行投資と思うこともできますが、現在のHoloLensのように一般家庭にはなかなか普及しないまま、商用利用に留まるリスクもあります。
まあ、個人開発では手は出せないですね。仕事で触れたらラッキーです。

最後に、発売がまだ先だということ。発表から発売までに準備を進めておく選択もありましたが、普及するか?デバイス購入できるか?などを考えたときに、個人としては少し様子を見る選択になります。

(おまけ)Apple Visionシリーズの未来予測

予想外の価格設定でVision Proが発表された訳ですが、ネーミングからして1, 2年後には廉価版の無印VisionやVision Airが発表されることが予想されます。
ただ、そのときの価格としては、元々予想していた$2,000~2,500くらいで、$3,500のProと比べたら安く感じるという戦略ではないかと。

こうなったときにVisionシリーズのデバイスが普及するかどうかの論点は、MRの体験どうこうではなく、MacBookの代わりになるかどうかじゃないかなと思っています。
要するに、Questみたいなゲーム機じゃなくて被るPCですよVisionがあれば被ったままMRで仕事ができちゃうのでMacBookは要りませんよ、と。
それであれば、30~50万円という価格設定でも少しは納得感が出ると思いますし、将来的にはそこを目指してほしい気持ちはあります(直近はQuestがありますので)

思想としては、HoloLensに似ていますね。WindowsのMicrosoftとMacのAppleが同じようなデバイス展開を狙っているのは興味深いです。
もしくは、Appleは最初からHoloLensをターゲットにして開発を進めていて、そこにMetaが上手く入り込んだと言えるのかもしれないです。

Meta Quest 3発表

そして、9月末。Meta Quest 3が発表され、10/10に発売。Quest Proと同様にフルカラーパススルーが実装されました。

Questシリーズで考えると、Quest Pro発売(約23万円) → Quest Pro値下げ(約15万円) → Quest 3 (約7.5万円)とフルカラーパススルーでAR(MR)できるゴーグル型デバイスの価格がこの1年間で15万円近く下がったということになります。

...つまりどういうことだってばよ?

MRデバイスの敷居が一気に下がって、一般家庭に普及する可能性が出てきたってことですね。
スマートフォンARの停滞で下がったjyukoのやる気ゲージも回復してきました。

開発環境の話

ここまでのデバイス環境の変化を踏まえて、AR開発環境の話。

これまで

数年前のAR開発だとスマートフォンARが主流で、ARKit/ARCoreが中心になっていくと考えていたため、両者を扱えるAR Foundationが一択のような状況でした。
次点として、8th WallやA-Frameを使ったWebARです。

ARKit/ARCoreが頭打ちになった時期には、Niantic Lightship ARDKにも期待したのですが、スマートフォンARはあまり伸びそうにない点を考えると、MRデバイスに対応できない点はやや不利かなと思います。
また、ARDK 3.0でAR Foundationと連携できるようになったため、無理にARDKに乗り換えなくても併用できる形になりました。
ARDK 3へようこそ | Niantic Lightship

現在はどうかと言うと、Quest向けのMR開発を中心に考えていった方がよさそうです。
Quest 3が今後普及していく可能性が十分にあり、普及した際にはスマートフォンARよりも体験の質が高いAR(MR)対応アプリが提供できるためです。

スマートフォンARをやりたいのであれば、Unityでアプリを作るよりもWebAR(WebXR Device API、A-Frame、8th Wall)を第一に考えた方がよいと思います。

Oculus Integration

なので、個人の活動としても、まずはMetaが提供しているOculus Integrationで開発していくことになると思います。
学習のメリットとして、Quest向けであればVRアプリの開発にも使える点もよいですね。

このブログにたどり着いたみなさんはご存知と思いますが、Quest開発に関しては、こりんさんのサイトが圧倒的情報量で、困ったらまずここを見るようにしています。

tech.framesynthesis.co.jp

あとは公式のリファレンス見たり、サンプルのソースコードを読んだりですかね。

Get Started with Meta Quest Development in Unity | Oculus Developers

Oculus Developer Center | Reference Documentation

VRをあまりやってこなかった分、まだまだ勉強中です。

AR Foundation

Quest開発を中心に考えたときに、今までAR開発の中心を担ってきたAR Foundationは使い物にならなくなってしまうのでしょうか?
見解としては"No"で、これからもAR Foundationの利用シーンはあると思います。

AR FoundationはQuest向けのOpenXRに対応を進めており、最新バージョンの6.0では、対応機能などわかりやすく明記されています。

AR Foundation | AR Foundation | 6.0.0-pre.4

Meta OpenXR Feature | Meta OpenXR Feature | 0.1.2

ただ、AR Foundation 6.0の必要環境がUnity 2023.2以降となっていたり、Oculus Integrationと比べるとまだできることが少なそうです。
現時点でQuest向けのMR開発にもAR Foundationを使うべきかと言うと、"比較的シンプルなAR機能で実現できるのであれば"という条件が付きます。

将来的には、AR FoundationとMetaがOpenXRの対応を進めていくことで、MRデバイス向けのアプリもAR Foundationで開発した方がよいという状況が生まれるかもしれません。
キーとなるのは、Apple Vision Pro向けの開発もAR Foundationと連携しているらしい(やったことないのでわからないけど)という点で、複数MRデバイスへのマルチプラットフォーム対応ができるようになってくると、AR Foundationに優位性が出てきます。

いずれにしても、AR/MRアプリの開発の選択肢は基本Unityになるので、Unity Runtime Feeの件はなんとか上手く着地してほしいところです。

ざっくりまとめ

AR開発を取り巻く環境はたぶんこうなった。

  • スマートフォンARからMRデバイス向けARへの移行期はじまったかも!
  • スマートフォンARはもうWebARでよくね?
  • アプリは引き続きUnityですかね
  • Apple Visionのことも頭の片隅に入れつつ、Questメインで開発していこうかな
  • OpenXRやAR Foundationの動向もウォッチしていこうな!

ということで、じゅころぐARでは、Quest向けMRアプリ開発するぞ編が始まるはずです。